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「凶気の桜」げんなりレビュー   <ネタバレにご注意ください>     by うらら 2002年11月


映画公開1週間ぐらい前に行われた試写会を見に行ったんですけど、「試写会で良かったなー」と正直映画館を出る時に思ってしまいました。窪塚くんと江口くんのダブル洋介共演という、私にとって最大の魅力であるこの作品ならば、まず間違いなくお金を出して見に行ったでしょうから。

ハッキリ言って胸クソの悪い映画でした。
何の新鮮味もなく、ただひたすらバイオレンスと極道と歪んだスローガンに包まれていて、今どきの若者はこういう作品を「大人社会へのアンチテーゼ」なんて表現しちゃうのかなーって、正直わかんなくなってきちゃった。「池袋ウエストゲートパーク」と比較されがちな描き方だけど、まったく違うんですよね。面白みがないっていうか、感情移入できる部分が何もなくて、しかもセリフからストーリーの展開から、すべてが端から端までありきたりで、ガッカリしました。

極道の描き方も王道をひた走るトラデッショナルな描き方で、のれん分けした兄弟組同士の抗争、組内部の抗争、スケープゴートにされる若い舎弟、そして血で血を洗う争い・・・、こんなの今更カッコ悪い。なんか極道賛辞のようだし、いくら東映配給だからってなぁ〜・・・。ただ、所々に「今」を感じさせる部分もあって、それは例えば原田芳雄さん演じる組長がうつ病で自殺した経験があるとか、トラウマを抱えているんですよね。それから、「渋谷」というローカルにフォーカスされていて(ローカルと呼ぶには余りにもデカ過ぎるんだけど)、それはUK発映画のようでもあり、そのローカルに暮らす若者の頭から尻尾までを丹念に追っているところなんかは(それでも使いまわされ過ぎてる感は否めない)好感が持てるかも。でも、世の若き男子諸君がこういうのに憧れちゃうんだとしたら、問題だなやっぱり。

窪塚くん自身はイイですよ。彼らしい演技だし、あんなに細い体なのに滅法腕っぷしが強くて、フツーならそういうのって不自然でマンガちっくになるところなんだけど、彼には身から滲み出るカリスマ性があるから自然に受け入れられちゃうのが不思議。まさに窪塚洋介マジック。もちろん、もう一方の洋介さんも非常に良い味を出しています。殺し屋の役なんですけど、冷徹過ぎないハードボイルドな姿が人間味があって、ちょっとマッドで何考えてるのか分かんないけど、それも気味が悪くて今までの彼にはなかった役どころですね。とにかく男らしさ全開でした。江口くんは彼と同じ年頃の男性諸君の9割が憧れた松田優作さんやショーケンがとても好きで、優作さんが「探偵物語」でジッポーの炎を全開にしてタバコに火をつける有名なシーンがあるんですけど、江口くんも若い頃からご多分に漏れず同じようにタバコに火をつけていたんですよ。そしたら、この映画でも然るシーンでボワっとジッポーの炎をくゆらせている姿にはちょっとニヤッとさせられましたね。彼の場合、少なくとも「ランチの女王」の役どころよりは全然イカしてました。アレがあったからこそ、尚のこと良かった(笑)。

上映される前に「映画が終わっても足元が暗いので、会場の照明が灯いてからゆっくりご退場下さい」っていうアナウンスがあったんですけど、近頃の映画館はそんなことまで気を遣ってアナウンスするんだーって何とはなしにそう思ったんですけど、これはこの映画だったからこその注意だったのかもしれませんね。エンドロールの最後のワンシーンが一番重要だったりするんで、見逃さないようにという遠まわしの忠告だったワケで。私もとっとと席を離れて帰ろうかなーと思いましたが、何となく映画を撮った制作陣のクレジットを見てみようという気になって座ってたのが幸いしました。と言っても、これまたありがちでひどく曖昧なラストシーンなんですけどね。

高橋マリコちゃんが窪塚くんの淡き恋心を抱く対象として共演していますが、彼女はいわば荒野に咲く一輪の花のような役割なのかしら。窪塚くん演じる山口がひと時のオアシスを得られる瞬間が彼女といる時という設定なんですが、どうにもこんな子いないだろーって感じもするし、役柄と彼女のルックスがマッチしていないっていうか・・・とにかく違和感がありました。すっごくチャーミングなんですけど、もうちょっと毒気のある女優さんが良かったなぁ〜。若い頃の宝生舞ちゃんとか、内田由紀ちゃんみたいな上品なのにパンチがある感じ。

それと、主人公の3人が特攻服のような揃いの右翼的なユニフォームを着用してるんですが、このマークがダビデの星に雷神のマークを掛け合わせたもので、なんか頂けない。「結社」という単語も好きじゃないし、とにかくテーマが分かんないんですよ。バイオレンスなのか、バイオレンスを否定してるのか、ストリート映画なのか、青春群像なのか???でも、そうしたわけの分からないブレたテーマが今っぽいのかもしれないですね。正にクロスオーバーの世界。結局は大人に利用される子供たちってことなのかな。

まぁ、見たいと思う人はこのレビューに左右されず、是非一度ご覧になってみて下さい。皆さんがどう思われるのかを知りたい。これは私だけの偏見かもしれませんし、この映画が良かったと思える人の意見をお聞きしてみたい。単に私がオバちゃんの仲間入りをしただけだったりして・・・(笑)。くわばらっ。













mohohan
映画「模倣犯」を見ての率直な感想 <ネタバレにご注意ください>   by キリエ    2002年6月
問題の片腕が発見された場所 ハッキリ言ってよく分かりませんでした。ピースのキャラクターは映画の中で語られているけど、どうも現在放送中の「空から降る一億の星」で木村拓哉くんが演じているリョウと被ってしまって、ピースのキャラクターがよく掴みきれないうちに山場を迎えてしまいました。マスコミの情報によると主役の中居正広くんはほんの数日しか撮影に参加しなかったらしいのですが、それを事実と裏づけるかのように彼の出番が異様に少なかった印象を受けました。映画が始まって最初の30分位は、脅迫電話の「声」としてだけの出演で、一体いつになったらピースは出てくるの?っと、じりじりしてしまいました。

 中居くんは犯人役なので、モチロンそれも有りかな、とは思いましたが、個人的な想像と期待とは大きく違っていました。っと、言うのも、中居くんはラジオの中でも、この役に入り込んでしまった、とか、役に入れ込みすぎて中々気持ちが切り替えられなかった、とか、ピースの役作りのために映画以外の仕事の話を一切遮断した、っと言ったようなコメントをしていたので、さぞかし長丁場の撮影で、考えに考え抜いた大役を演じきったんだろうと思って見に行ったのです。ところが、中居くんの見せ場のシーンがあまりに少なく、またストーリーも「リプリー」、「ザ・コレクター」といった洋画のスト−リーと被って、「ベストセラーブックの映画化」と期待に大きく胸を膨らましていたわりには、ストーリーに新鮮味がなくて正直がっかりしました。この映画を見れば原作を読まなくて済むんじゃないかって期待も同時に裏切られました。その理由は私のような原作を読んでない人間が映画を一回見ただけでは、ピースというキャラクターも然ることながら何故この映画のタイトルや本のタイトルが「模倣犯」なのかとか、犯罪の動機等も納得が行くほどのみ込めなかったからなのです。ピースというニックネームの由来は分かりましたが、何故ピースが次々と女性を誘拐、監禁、拷問、殺害していったのか、そしてそうする事で彼が何を得ようとしたのか、何が彼をそう駆り立てたのかは、大雑把にしか伝わって来ませんでした。説明はモチロンされているのですが、どうもしっくり来ない。矛盾ばかりが思い浮かんでしまいました。殺人犯を描いている映画なのに、ハラハラすると言うよりも、ある種有り得ない事を描いたファンタジックな世界という印象が残りました。また、ストーリーの一部になっている重要な存在であるインターネットの書き込みなども、スクリーンに浮かんでくる文字が読みにくくて、さっぱりついていけませんでした。(それってひょっとして私だけ?)エンディングのクライマックスでTVのOA中にピースの正体が暴かれピースサインをしながら彼が自爆するシーンは、確かに衝撃的な終わり方でしたが、あまりに突飛過ぎる気がして、目が点になりました。

 原作を読んでいないので、それぞれの役への事前の期待などもありませんでしたが、中居くんは素晴らしかったと思いました。ピース特有の冷酷な表情は堂に入ってましたし、ピースという謎めいた役を彼なりに巧みに演じていた。孫を惨殺された豆腐屋のオヤジ、有馬義男を演じた山崎務さんの存在はこの映画を数段上の場所に位置付けたと思えました。新人俳優のKut-Tunでお馴染みの田口淳之介くんはセリフも少なく、まだ演技しているという域ではありませんでしたが、透き通るように純粋で壊れやすい少年"塚田真一"役にはハマリ役な感じ全景を受けました。映画の後半で真一が義男に泣きついていくシーンは思わずもらい泣きしそうになりましたし。脇をかためる多彩なキャストの中でも一番印象に残ったのは藤井隆さんでした。高井和明は悲劇的な役でしたが、藤井さんのイメージに合っていたような気がします。ピースのしもべのような栗橋浩美を演じた津田寛治さんも、ピースに洗脳され、操られて、犯罪を重ねていき、最後には高井と共にピースの犠牲者になる役を好演されてました。英語のセリフはもうちょっと共演者の木村佳乃さんから手ほどきを受けた方が良かったのでは?と思いますが・・・。

 映画「模倣犯」は興行成績もよく、リピーターも多いそうなので、ひょっとしたら映画の作り手の意図として、1回見ただけでは分か塚田真一くんが犬を散歩りにくく、数回足を運ばなくては映画の全容を十分把握できないようにプロットされているのかもしれません。が、しかし、あいにく私は何度も見たいという衝動には駆られませんでした。

写真のロケ地は、東西線「木場駅」徒歩10分「木場公園」です。






GO
メイキング・オブ・GOのDVD DVD 金城一紀さんの原作 GO―窪塚洋介

GO レビュー   by キリエ    2001年11月4日
皆さんは自分の生まれ育った国であるここ「日本」の国名の意味をご存知ですか?また、違う言い方をすれば、「日本」という国名に意味があった事をご存知でしたか?日本では海外情報が容易に得られ、若者を中心として数々のスラングや略語が生まれ、その意味を知る事が重要視される風潮があるにもかかわらず、生まれてからほぼ毎日暮らしているであろうこの国の国名の意味を知ってる人ってどれだけいるのだろうか?さらに噛み砕いて言えば、その意味に一度でも関心を持った人はどれだけいるんだろうか?この映画はそんな素朴な疑問を投げかけている。

GOが撮影された時の世界は少なくとも今より平和だった。今まで実感することなく当然の権利として捉えていた平和への関心が高まる昨今、この映画は私にさまざまな現実を突きつけた。民族という壁、国籍という資格、プライドと妥協、暴力と正義、そんなモノのすべてが目では見えない時がある。しかし視覚で判別できない違いを人はどうして見たがるのか。アメリカでなら日本人を容易に判別する事は可能だ。でも、アメリカでも日本でも日本人と韓国人を判別する事は難しい。しかし、日本人と韓国人は違う。外見は似ていても背負うものがまったく違っているかもしれない。とりわけ日本で生まれて育った韓国人にとっては。そんな目に見えない違いや負荷をこの映画は主人公の少年を媒体として、ユーモラスにそして真剣に描いている。

ちょっとクドイくらいのバイオレンス、いちいちハートを突き刺すダイアログ、ナンセンスな儀式、正義の為に奪われた若い命、DNAより重要な親子の遺伝子と国籍、血統によって引き裂かれた愛、目に見えない国境、・・・ひとつひとつのシーンがテーマやメッセージを持っていた。だからこの映画はチェスのゲームの様に、意味のない動き(シーン)などひとつもない。

窪塚くんが演じる主役の杉原は、彼が演じた役の中でもIWGPのキングの次にハマリ役。高校生役ならまだしも、中学生まで違和感なく演じてしまう彼のエイジレスな存在はミステリアス。ここで今更彼の演技力の評価を書き示すのは、ベートーベンに向かって「イイ曲書くね!」というのに等しいくらい失礼な事なので書かない。それにしても、素晴らしい。

杉原が最も尊敬するジョン・イルに悲劇が起こった時、そしてその悲劇を痛む杉原が落語を見に行くシーンは、日本映画の名場面集として後世に残るのではないかと思うほど心打たれた。後述のシェークスピア繋がりの延長にあるこのシーンで、泣きに泣いたのは言うまでもない。

私のお気に入り脇キャラのひとりである俊足のタワケ先輩は、山本太郎さんが27才で高校生を演じた。ひょっとして森田健作さん=「オレは男だ!」や、石橋正次さん=「飛び出せ!青春」の高齢者高校生役記録を抜いたのではないか?(爆)また、杉原の両親を演じた大竹しのぶさんと山崎務さんのキャスティングはお見事。山崎さんのアカペラ独唱の♪Silent Night, Holy Night(きよしこの夜の英語の歌詞)のくり返しは今でも耳に残る。

映像は、マドンナのご主人であるガイ・リッチー(代表作「ロック、ストック&ツー・スモーキング・バレルズ」、ブラッド・ピットの「スナッチ」)やダニー・ボイル(代表作「トレイン・スポッティング」、デカプリオの「ザ・ビーチ」)に勝るとも劣らない独特のタッチが活きていた。また、映画「恋に落ちたシェークスピア」の特徴的な手法がこの映画の中にもあった事に気づかれた方はいましたか?それは、杉原と桜井が出会うシーンで効果を発揮していた。脚本は、私の中のカルトドラマである「池袋ウエストゲートパーク」の宮藤官九郎氏であった事も重要。

あまり邦画は見ないので、狭い範囲の中での比較になるが、最近見た邦画の中では一番感動したと言える。様々な紙面でも絶賛されていたけれど、確かに期待以上だった。

ところで「GO」というタイトルは何故なんだろう?原作を読めば分かるのかな?

以下は余談。

私の学生時代、クラスに「金(キム)」さんがいて、担任をはじめクラスのみんなが彼女の苗字を日本語読みをして「きん」さん(或いはちゃん)と呼んでいた。私は彼女と親しくなるのだが、ある日の昼休み、彼女から「これからは「きん」じゃなくて「キム」って呼んでくれない?」と告げられた。それまで私は彼女を「キム」って呼んだら、彼女が韓国人であるという事が、彼女が韓国人である事を知らない人に分かってしまって逆に嫌な思いをするんじゃないかと、気配りのつもりで「きん」ちゃんと呼んでいた。しかしそれは私の日本人としての思い上がりからくる配慮だったとその時我に返って気づいた。そして、彼女が日本人ではない事を隠そうとしてるんじゃないかと思い込む事で彼女自身や彼女の韓国人としてのプライドを傷つけていたかもしれないと初めて知った。と同時にその瞬間、私と彼女との間に境界が出来たような気もした。だから、柴崎コウさん演じる桜井が、窪塚くん演じる杉原が日本人ではない事を戸惑った気持もわからないではない。でも、そのシーンで彼女の取った行動と放ったセリフは許せないし、理解する事はできないが・・・。例え生まれも育ちも日本だからといっても、日本人だけが日本に住んでいるわけではないし、日本人として受け入れられたいと思っている人たちばかりではない事をその時初めて深く考えた。私たち日本人が海外に渡ったらきっと同じ様な感じ方をするのかもしれない。

個人のアイデンティティーとは?それは戸籍や住民票やパスポート、外国人登録票、ましては履歴書や苗字の読み方なんかでは表し尽くせないはずなのだから。

この映画を見て、平和国家である日本に属する平均的日本人である事と、日本にまったりと存在する平和のありがたみを感じないではいられなかった。しかし、それでイイのかは不明。






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